清田みくり「かさぶた」#3
写真家 丸谷嘉長 / モデル
「今日のテーマは“かさぶた”」と言われて、どうしようかと思った。
かさぶたは新しく作られている皮膚を守っているイメージがあるけれど、どう表現していいかわからない。
だから「自分はかさぶただ!」と思って、いろんなところにくっつこうと思った。新しく作られている皮膚を必死で守るように。
私の長所は真面目なところ。学校の規則も守るし、提出物を忘れることもない。信号無視もしない。
でも、この真面目さは女優にとって、どうなんだろう。
私は感情を爆発させる女優さんになりたいのに、うまくできないのは真面目だからなのだろうか。
だから、今はとにかくいろんな経験をしたい。いろんな感情を手に入れたい。
「心が傷ついた時、どんなことをする?」という質問を受けた。
私は「時間が経つのを待つだけ」と答えた。
体に傷ができた時には薬を塗るけど、心が傷ついた時には癒えるのを待つだけ。
待って治らなかったことはないし、すぐに治そうとしても簡単に治るものではない。
新しい皮膚ができるのを待つだけだ。
「逃げたくなる時は、どんな時?」とも聞かれた。
私は「自分が自分の気持ちと真逆のことをしている時」と答えた。
友達と話をしていて、本当はすごく怒っているのに愛想笑いとかをしている時は、自分が嫌で逃げたくなる。
でも、そこで逃げないのが最善策だと思うから、そこにいる。
自分の気持ちをかさぶたで隠してるのかもしれない。
私はかさぶただ。今、いろんなものにくっついている。
でも、かさぶたが剥がれるのは、もうすぐだと思う。
●モデル/清田みくり……2002年8月20日生まれ。和歌山県出身。女優
清田みくり「かさぶた」#1
写真家 丸谷嘉長 / モデル
行き止まりの道に追い詰められて、立たされた。
「今の感情を表現して!」というカメラマンの声に戸惑う。
私は、これまで本格的な撮影をしたことがない。
もう、どうしていいかわからない。
中学3年生の時に芸能界に入った。
映画『マリと子犬の物語』(2004年新潟中越地震での実話をもとにした作品)が好きで、女優に憧れた。
普段の私は、クラスの中で輪の中心にいるようなタイプではない。
どちらかというと地味で目立たない存在だ。
“意気地なし”なんだと思う。友達が間違ったことを言っていても『違うよ』と声に出して言えない。だから『ああしとけば良かった』と後悔することが多い。
自分の気持ちを伝えるのが苦手。それなのに“表現”の道を選んだ。
ただ元気で明るいだけの人は、平面的というか……率直にいうと面白くないと思う。
私が目指している演技は、悲しさを隠しているのだけれども何かの拍子でそれが出てきてしまうような表現。心の傷を隠して生きる人が気になる。
撮影が続いている。金網を蹴ってみる。すると少し気分が変わった。
開き直ったというか、なんだか少し楽しくなってきた。
次は何をしよう。
●モデル/清田みくり……2002年8月20日生まれ。和歌山県出身。女優