「光の在処」
私にとって光は、写真における最も重要なファクターのひとつである。 特に自然光での撮影においては、 その光をどのように扱うかが、表現の核心となる。
しかし、現実には想像や理想から離れた、不確定なことばかりだ。 光はコントロールできない。 だからこそ、そこに在る「約束されない光」を、どう受け取るかが大切だと思っている。
この作品は、そうした不確定な光の中に身を置き、 はじめて訪れた土地にモデルである被写体を立たせ、 その場に存在する自然光だけを使って撮影したセッションである。 極力手を加えず客観性も大切にした。
まばゆい光そのものではなく、 照らし出された影や輪郭、フォルムの中に、 背景の奥行きや、被写体の内面の機微が浮かび上がるのを感じた。
今回の被写体である役者・尚音さんにも、 「ご自身の心の中の光を探す」ことをテーマに撮影に臨んでもらった。
光とは、ただ照らすものではなく、 そこに在る誰かの存在を立ち上げるための、 静かな導きなのかもしれない。
