光の在処
写真表現は多様であり、 膨大な欲望を削ぎ落とした先にこそ、たどり着ける領域がある。
モノクロでの表現には、脳内を色のない世界へと変換し、 対象の光やフォルムを捉えるための、特殊な視点が求められる。
「白黒」という言葉が一般的ではあるものの、
実際にはグレートーンの濃淡の世界であり、
写真をおさめる前に、すでに目の前のすべてを「色のない事象」として受け取る必要がある。
写真は、現実とは異なる。
そしてモノクロの世界は、その違いを最も顕著にあらわす。
光はグレーの階調の中で主役となり、写真の本質を静かに教えてくれる。
写す者はただ、
モノクロの領域で濃淡が動き出すのを、
じっと待つしかないのである。
この最終回となるシリーズでは、
尚音というひとりの若き存在が
静かに、確かに、光と影の境界を歩んでくれた。
その軌跡が、グレートーンの中に息づいている。




