森七菜 #2原価
私は「お芝居で誰かを感動させたい」と思って女優になったわけではない。人の心を動かすということはとても難しいことだから。
でも、この前、あるシーンを演じて「キラキラしていて泣いちゃった」という感想を聞いたときはすごく嬉しかった。
「多くの俳優さんたちが目指しているものは、これだったのか」と思った。
だけど、それを目標にはしない。
台本を読んでいれば「ここは感動するシーンだろうな」とわかるけど、それを自分の中で意識しない。
意識すると不自然になる。
だから、これまでと同じように「相手の役者さんのお芝居を受けて、それを自分の中で膨らませて、お返しする」だけ。
私は写真を撮られるのが嫌い。
「ヘンなふうに撮られたら、どうしよう」と不安になるから。
でも「Negative Pop」の写真は少し違う。
これまで自分でも見たことのない表情がたくさんあって、写っているのが自分ではないような気がする。
だから「この表情は良いけど、これはダメだな」とか客観的に写真を見ることができるようになった。
なんでだろう。不思議だ。
自分の中の写真に対する思いが変わりつつある。
どう変わったのかはわからないけど、何かが変わりつつあるのは確かだ。
「好きなもの」と「嫌いなもの」を聞かれた。
好きな食べ物は、最近は断然、お肉。
「毎日、焼肉でもいい」ではなく、「毎日、焼肉がいい」くらい好き。
好きな場所は、お布団の中。眠りに入る前のウトウトする瞬間が好き。
きっと、みんな好きだと思う。
好きな映画は、『ヒミズ』や『湯を沸かすほどの熱い愛』。
自然な演技が好き。私の目標だ。
嫌いな食べ物は、生のトマト。
スープとかミートソースに入っている茹でたトマトは食べられるけど、生はあんまりおいしくない。
嫌いな場所? 嫌いな映画?
私は「嫌い」と決めつけたくはない。
今は嫌いでも後から好きになるものもある。
「嫌いだ」といってしまうと、ずっと嫌いだと思われて損をするから。
だから、私は嫌いなものはあまりない。嫌いな人もいない。
今回のテーマは“原価”。学校で勉強して頭から離れなくなった。
例えば、今、私が買おうとしているものの原価は20円。
そこに人件費や運搬費などが加わって100円になる。
これまでは、売っているものの値段だけを見て「これは買おう」「これは買わない」と判断していた。
原価や付加価値のことを考えないで買っていた。
この世の中には、原価みたいに気づいていないのもがたくさんあるはずだ。
じゃあ、森七菜の原価っていくらだろう?
実は森七菜の原価ってすごく低くて、周りの人がたくさんの付加価値をつけてくれて今があるのかもしれない。
私の演技を見た人が、「感動したよ」と付加価値をつけてくれる。
カメラマンさんが、私の知らない顔を写してくれる。
好きなものって付加価値だろうか? これはよくわからない。
とにかく、私という原価にいろんな付加価値がついていく。
……みなさん、本当にありがとうございます!
森七菜 Nana Mori
2001年8月31日生まれ。大分県出身。女優
2019年公開予定の映画『Last Letter』(監督・岩井俊二)で、主人公の娘・岸辺野颯香 と 主人公の高校時代の二役を演じる。
また、2019年1月6日スタートのドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ/毎週日曜・22時30分から)では、電脳部に所属するアニメ好きの堀部瑠奈を演じる。
インタビュー/村上隆保(Takaho Murakami)
ヘアメイク/佐藤寛(Kan Sato)
#1「死ぬこと」