彼女は、写真を撮る。
インスタグラムにあげるわけではない。
フィルムカメラで撮る。
撮ったことも忘れて、ある日、現像に出す。
彼女は、言う。
撮ってすぐ見られないのが、よくて。
なんでわたしこの瞬間、残したかったんだろう、
というのを考えるのがすごく愉しい。
「だって写真になっちゃえばあたしが古くなるじゃない」と
唄ったのは、椎名林檎だが、
中村映里子は過去に現在を見つけようとしているように感じた。
撮影前、写真を撮った丸谷嘉長からメールが届いた。
丸谷がいつも女優に対して行う、コンセプトの送信だ。
読んだ時にはわからないというか、
その言葉がぐるぐるぐるぐる頭の中を回って。
考えるの、やめて、しまいました。
電話インタビューだったので、表情はわからないが、彼女は笑っていた。
映画やドラマで役を演じることと、写真で自分を撮られることの違いは?
思いっきり紋切り型の質問をしてみる。
変わらないですね。
自分の中にある何か本当のこと、
真実を乗せてやらないと自分がやる意味がないとどこかで思っている。
今回撮られて感じたのは、じわじわと表現に対する決意みたいなものが
けっこうあふれてきたこと。
真実と決意。女優があまり口語で使わない言葉だ。
でも、その語り口は意志的という感じではない。
正直、今回の写真で内面的なものが映っているかどうか、
聞かれると、正直わからない。
ただ、感じてもらえるものにはなったんじゃないかと想います。
そこには、自分を投影して演じようとする身体と意識があり、
一方で、無意識の身体と、無意識の意識がある。
その印象は、強く、もろく、そして、ささくれている。
いまも、彼女は過去と現在と未来を合致させるべく、もんどりうっている。
でも、そのたたずまいは静かだ。
【インタビュー】 小林淳一
【写真】 丸谷嘉長
【ヘアメイク】 佐藤寛
【ロゴデザイン】 坂下晶夫
【モデル】中村映里子…..雑誌のモデルを経て、現在は女優として、映画、ドラマを中心に活躍。
主な出演作として、映画では、『カケラ』(2010)、『愛の渦』(2014)、『愛の小さな歴史』(2015)、『結婚』『予兆 散歩する侵略者 劇場版』(2017)、『カゾクデッサン』、『そこにいた男』など
ドラマでは、大河ドラマ「軍師官兵衛」(2014)、「裏切りの街」(2016)、「刑事7人」「ブラックリベンジ」(2017)、「孤高のメス」「トップリーグ」(2019),「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」など